Pose Method of Running ポーズ・ランニング

ランニングフォームを意識して走力を上げよう!

Pose Method of Runningのテキスト(英書)の要約や原文と対訳を紹介しながら、アメリカの人気ランニングフォーム理論について考察してみる

40 腕の動作によるエラーの修正 CORRECTING ERRORS IN ARMS' MOVEMENT

腕振りを考察してランニングフォームを見直そう!

Pose Method of Running, Chapter 40, p295-299, 要約と翻訳

 ランニング中の腕の動作におけるエラーの何を考察したらいいのだろうか? 基本的には脚と完全に協調して腕が動作していないのであれば 修正すべきエラーがあると言える。ランニング中は、身体の各部位は力学的に完全に調和して活動している。脚の動きが、脚以外の動作を決定付けているといえる;脚の動きと同調していない動作はランナーのバランスを崩す要因ともいえる。
 脚の動きに同調して腕を動かし続けるという行為は、ランニング動作の先入観から来る心理作用ともいえる。脚が地面から離れている時に推進力を得ようと懸命に四肢を動かして無駄にエネルギーを浪費するのと同様に、積極的に腕を動かして推進力を得ようとするいかなる企ても理想とするランニングフォームを崩す要因となるのです。
 f:id:Tomo-Cruise:20170715071512j:plainレースのゴール前数キロでのラストスパートの姿が腕を動かして推進力を得ようともがいている一番の例でしょう。疲れ果てた身体から最後の気力を絞り出そうと懸命に腕を振りだしてしまうのです。そして腕の振りはさらに激しくなって、果たして何が起こるのでしょうか?第一に腕の振り過ぎによってゴールに向かう直線ラインから逸脱してしまうこと。第二に突如必要となったエネルギーは脚に使うべきものを腕に使うこととなり、また必要以上に浪費してしまうこと。第三に急なエネルギー消費の上昇への対応として、腕振りは大量な乳酸を発生させ、数秒で筋肉を石のように固くしてしまうことが考えられます。そして結果的に痛みが発生し、脳に不快感信号を発するのです-すぐにも全システムの操業を停止せよ!-と。
 この、脚が思うように動かせなくなった愚かなるランナーに降りかかったことは、完全にバランスを失ってしまっているということなのです。まずはじめに、過剰な腕振りは物理的バランスを台無しにし、尻に回転動作を加え、身体が直立することを阻み、ゴールラインへ真っすぐに走ることをも阻んでしまうのです。
 次に、身体エネルギーの余力に対しての臨界点を。最も必要となる時に損なってしまっているということです。残るすべてのエネルギーを絞り出し脚の動作へと使うべきところを、腕振りに振り向け、またその動作から生じる身体の各部にも分散させてしまうのです。
 そしてついには、このランニング技術の混乱とそれによって生じる痛みは、ランナーのパフォーマンスを左右する最重要点である精神的バランスを崩壊させてしまうのです。余計な動きのない身体が雑念のない精神に仕事を全うさせうるのとは逆に、過剰な腕振りは精神を混乱させ、痛みなどの影響とも戦い、集中力を失わせ、ネガティブな思考へと導いてしまうのです。
 f:id:Tomo-Cruise:20170715081713p:plainオリンピックでさえ、ランナーがゴールラインの近くで全ての調整力を喪失したような状態でいるのを見た時があるだろう。スムースに流れるようにゴールラインに向かうのとは対照的に、断続的にけいれんしているように制御不能に陥っている状態でゴールに向かっているのを。観衆は選手のガッツに熱っぽく応援してくれているものの、実際には懸命に余計なことをしているだけで、パフォーマンスは応援と裏腹に落ちてしまっているのです。
 ランナーにとって結果を出すために出来る限りの全ての手段を尽くすことはありがちなことではあり、ポーズメソッドにおいても同様に様々な手段はあるが、その全ての手段というのは適切な手段であって、不適切な手段を排除することも意味するのです。よってパフォーマンスを上げるためには、適切な知性・ものの見方とランニング技術の正しい把握が前提として必要となるのです。
  さて、ここでランナーとは力学的体系(mechanical system)そのものであるという概念を思い出してほしい。知っての通り、ランニングにおいて脚は実際に主役であり、その他の部位は従属すべきなのです。この力学的体系においては、内在的で持続的なエネルギーの流れは脚から始まり、胴体へ、そして腕へと進みます。このエネルギーの流れ、もしくは変換は身体の力学的バランスにとって極めて重要なのです。そして腕はバランスを維持するために不可欠な役割を果たすのです。
 基本的に身体のバランスが良くなるほど、ランニング中の推進力よる軌道は直線的になるのです。言い換えれば、バランス能力が上がるにつれ力学的効率性が増すのです。身体を力学的効率性のピークまで持っていければ、動作を維持するのに必要となる総体的なエネルギーを削減し、身体にかかる負荷を大いに抑制することにもなるのです。平易な言葉に置き換えると、スムースでバランスの取れたランニングは骨、関節、腱、靭帯そして筋肉にやさしい走りなのです。
 ランニングの力学的連続性は、前傾姿勢から始まり、支持脚の一方からもう一方への素早い入れ替えとすぐに続きます。バランス維持の無意識的な反応として、身体はわずかながらの肩の回転動作をするのです。その時、逆側の脚が支持脚の入替を行っており動きを相殺しバランスを取るのです。肩に回転動作が発生するのに応じて腕の動作が起こるのです。
 f:id:Tomo-Cruise:20170715071740p:plain腕の動きは基本的にこの連続動作の終点に位置付けられます;その動きは完璧なバランスを維持するために最小限の抑えるべきなのです。この一連の連続動作によるエネルギーの流れは同一ルートを常に通ります。この経路を通るエネルギーの解放は、筋肉の必要以上に緊張させることを抑制し、全身及び各部位全体の動作の解放にもつながります。そして腕の役割は脚と身体の状態を「聞く」ことであり、バランスを維持するために必要な調整をして、その動作のいかなる変化に対して反応する態勢をつくることであるのです。
 例えばトレイルランニングでつまづいたなら、腕によってすぐさまバランスを取って立て直し、できる限り早く最適なフォームへと復帰させることでしょう。そのような状況下になくとも、腕は完璧なフォームとバランスを維持するために最小限の動作で常に備えているのです。
 具体的に言うと、腕を大げさに上下に動かしたり、脚の動作より速く動かそうとしたり、体の前方や肩の高さまで振ったりしてはいけないのです。腕の運びは、開放されていて、リラックスしていて、最小限の動作にとどめておいて、脚の動きと調和させておいて、必要な時に直ぐに反応できるように備えさせておくものなのです。
 

39 体幹動作のエラー修正 CORRECTING ERRORS IN TRUNK MOVEMENT

効率的に走るために体幹をぶらせないように意識しよう!

Pose Method of Running, Chapter 39, p291-294, 要約と翻訳

 ランニング中の体幹の機能とはどうあるべきなのか? 動かすべきなのか? 推進力に貢献させるべきなのか? 積極的に動かすのか、受動的なのか?
  f:id:Tomo-Cruise:20170622154624p:plain 本質的に体幹とは身体の大部分を運ぶコンテナと言える(Fig.39.1)。疲弊することなく適切な姿勢で全体重を運べるように強化されているべきなのです。また衝撃を吸収すべく柔軟性も必要です。そして推進力を落とすような余計な動作を防ぐ安定性も求められるのです。
 ランニング中の体幹の安定と柔軟性を維持は簡単なことのように思えるかもしれませんが、実際にはあなたのランニング効率を押し下げ、適切なランニング技術の邪魔をするいくつかの外観からはわかりにくい逸脱要因が存在します。
 f:id:Tomo-Cruise:20170622054829p:plain その一つは、重力を無理に活用しようとして、もしくは単に疲れから、体幹を前に折り曲げることです(Fig.39.2)。ポーズメソッドにおいての前傾とは身体全体の前傾であり、上半身だけ腰から折り曲げることではありません。
 ランニングで体幹を前方に折り曲げる姿勢を取ると、自動的に背中の筋肉群に負荷がかかってくるはずです。また前に突っ伏さないように防御的な心理的反応が働いて、脚は前方に押し戻す動作を始めるでしょう。その動作はエネルギー浪費だけでなくブレーキ効果も生んでしまうのです。不得策と言えるでしょう。
 

f:id:Tomo-Cruise:20170622154850p:plain同じような不得策と言えるのが体幹を後方に反らすことです(Fig.39.3)。この原因はやはり疲れからか、スピードについていけてないかでしょう。実力以上の速度で走ってしまっていると無意識的に上体を反らしブレーキをかけてしまうのです。そしてそのブレーキ作用のために前進するのに余計な負荷がかかってしまうのです。脚は身体の前方に無意識に投げ出され、引力の活用機会は最小化され、総体的に身体力学的効率は相殺されてしまうのです。
 前述の2つの例ほど多くはありませんが、脚の極端な重心移動から胴体を横にスイングさせてしまっているエラーも見受けられます(Fig.39.4)。懸命に前進しようと脚を押し込んでいることが元凶でしょう。この脚の作用力は胴体をぶれさせ、その振動によって脚の自由運動域を狭め、支持脚の離地を難しくしてしまうのです。
 最後に両肩が横方向に動き過ぎている人も見受けられます。肩は推進力を生むのに何の貢献もしません。脚の動きに連動して回転するくらいのものです。適正に走れていれば、支持脚を交替する際の最小限の回転動作以外は沈黙を守るべき個所と言えます。しかし、ストライドの軌跡が垂直方向から逸脱してしまうと、それに応じて肩の回転が必要以上に増大してしまうのです。それはやがて脚の軌道の逸脱をさらに悪化させてしまうのです。つまりホイールが外れてタイヤが歪んだみたいな状態になってしまうのです。
 以上のエラーを修正するカギは、まずポーズメソッドの基本に立ち返って体幹の役割を思い出すことだ。その役割とはハムストリングスが支持脚を交替させる動作中、胴体の動きを抑えるいうことにつきます。
f:id:Tomo-Cruise:20170622155210p:plain 胴体を抑えられてるかをチェックする簡易的な方法の一つは、こぶしを固めた両手を前方に並べて出して走ってみることです(Fig.39.5)。もし手が右左へと逸れるようであれば、きっと脚を酷使して走っている(引力を活用できていない)ことでしょう。
 f:id:Tomo-Cruise:20170623045545p:plain同じようなドリルを今度は手を後方に持って行って試してみれば、臀部や脚の動作が柔らかく行えていると感じることができるでしょう(Fig.39.6)。さらに走っている際に自分の影をチェックして、自分が想像している理想のフォームに余計な動きがないか、姿勢が崩れていないかなどをチェックすることも有益だ。そして常に次のことを忘れないでほしい;動作は体幹の下で行われているであり、体幹によって動作させているわけでなない。車のシャシーは車輪の動作によって移動しているのであって、自らは推進力を生み出してはいないのと同様に、身体の体幹部分は脚に乗っかっている部分であり、推進力の邪魔になったり推進力を生み出そうとしてはいけないのです。

38 脚動作のエラーを修正する CORRECTING ERRORS IN LEGS' MOVEMENT

脚の動きを徹底的に検証してポーズランニングを完成させよう!

Pose Method of Running, Chapter38, p267-290, 要約と翻訳

 多くのランニングのエラーは不適切な脚運びが原因であるが、他にも体幹や腕の動かし方が問題点となっていることもあり得る。 どこの箇所のエラーであろうとも、ポーズメソッドの理解不足、もしくは走るときの感覚の捉え方が間違っていることが起因しているでしょう。後者の場合はタッピングドリルに戻って復習しましょう。至って単純なエクササイズであるが、地面に力まずに脚を落としているとテキストの指示通りに実践していると思っている一方、実際は筋力を使って地面を蹴っていることが多いのです。
 自分の走りを客観的に見てもらうだけでなく反復練習時にもトレーニングパートナーがいると助かります。もしタッピングドリルを正しく行えていなかったら指摘されることでしょう。しかし外見は適切に行ってはいるものの、その感覚がどういうものか捉えることができずに次々とドリルをこなしてしまうことも考えられます。そして自分ではポーズメソッドで走っていると思っているものの実際は間違っていることもあり得るのです。
 そこでポーズメソッドを段階的に学ぶのと同様に、順々にエラーを見つけ修正していくという段階が必要となるのです。なぜなら、いつ・どの段階であなたが真にポーズメソッドの神髄に触れることができるか分からないからなのです。

 脚動作のエラーは3区分に分けて修正していきます:脚が遅れてしまっているかどうか・脚を前方に振り出してしまっているかどうか・脚が地面と接している時間がどうか。

 脚が身体から遅れるのを防ぐドリル

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f:id:Tomo-Cruise:20170520072522p:plain 脚が身体の後方に遅れてしまう原因はいくつかあるものの、その全ては「あれをするな!」のカテゴリーに入る。あなたはただ単に脚を後方に残したまま受動的に着地する脚を伸ばしているかもしれない(Fig. 38.1)。または懸命に着地した脚を蹴り上げ、イラストのように足首を股関節と平行なラインの高さまで上げているかもしれない(Fig. 38.2)。

 「あれをするな!」だけでは修正するのに十分ではないだろう。基本に立ち返り次のポーズランニングの主要素を思い出してほしい。

1)支持脚が切り替わった瞬間に地面から引き上げるべし。
2)脚を引き上げるのにハムストリングスのみを使用するよう意識するべし-そして地面から引き上げたらその指令(ハムストリングス使用)をやめるべし。

3)足首が尻の下に来るように垂直に足を引き上げるべし。
4)脚を地面に押すようなことはせずに腿前部(大腿四頭筋)は弛緩させたままでいるべし。

 脚の後方残りエラーを修正するには、着地直後に素早く脚を引き上げることが重要であり、同時に膝関節を緩めて引き上げた脚を折りたたみ尻の下に持っていくのです。ハムストリングスの適正な使い方に意識を向けて上記の動作を行うのです。実際、ほとんどのこのセクションのポーズメソッド習得確認のドリル(反復練習)は、支持脚を地面から引き上げるハムストリングスの適正な使い方に向けたものなのです。
 習得確認ドリルに臨む時には、常に実際のランニングで使うポーズランニングの感覚を身につけるための練習だということを忘れないでほしい。ドリルは心拍数や最大酸素摂取量を鍛えるという身体的なトレーニングではなく、感覚を養うのが目的なのです。
 これらのドリルに鍛錬(トレーニング)を求めないでください。代わりに頭を解放して(先入観を捨てて)適切な技術での動作のビジュアル化に努めてください。

1)タッピングFoot Tapping : Fig.38.3)
 f:id:Tomo-Cruise:20170520073907p:plainそうです、このドリルは以前にも登場しました。しかし、思い出してください。ここで一旦、基本に立ち返ってみるのです。両脚を降ろしているランニングポーズのS型ポジション(重心は支持脚に乗せ、膝をやや曲げ)から遊脚を地面から引き上げ、再び地面にストンと落として戻す。毎回、遊脚が同じ場所(支持脚のすぐ横に)に落とせているかをしっかりと確認してください。足の配置を正確に行えているかがとても重要なのです。10~20回繰り返したら左右の脚を替えて同様に繰り返してください。

f:id:Tomo-Cruise:20170520074101p:plain2)支え付きのランニングポーズSupported Running Pose: Fig.38.4)
 椅子の背などを利用して体重を両腕で支えて脚をランニングポーズ状態にしてください。片方の脚を浮かせたままで、もう一方の脚を地面から上げ下げします。再度、脚を戻す位置が正確に同じ場所になっているか確認してください。脚の引き上げにはハムストリングス(裏腿)を使うこと(地面に脚が着いた瞬間にスイッチを入れること)。

 f:id:Tomo-Cruise:20170527072532p:plain3)ストレッチコードタッピングStretch Cord Tapping: Fig.38.5
 伸縮性のゴムの一方を片脚の踵上に取り付けて、もう一方を同じ側の手に固定します。コードを持つ手は尻の横付近に置いて、コードを付けていない脚はランニングポーズの支持脚で待機します。1)タッピングと同様にコードを付けた遊脚側を上げ下げしますが、ゴムの伸縮性を利用して引き上げを素早く行います。ゴムの伸縮性の力でどれだけ素早く脚を地面から引き上げることができるかの感覚をつかでほしいのです。そしてその感覚を思い出しながらランニングに臨んでほしいのです。その場で進まずに左右、10~20回反復してください。そして片脚にコードを装着したまま走ることにもトライしてください。はじめは30~100メートルから始め800メートル(この場合はややスピードを落として)。

f:id:Tomo-Cruise:20170524161431p:plain4)パートナーを後方に伴ってPartner Running Behing: Fig.38.6)
 ※この後、パートナーと共に行うドリルが続きますが、そのパートナー=コーチはポーズメソッドを習得しているのが前提でしょう
 パートナーに真後ろについてもらい、両肩に手を添えてもらって走ってみてください。そしてあなたの脚の動きに同調してもらいましょう。真後ろについてもらう走りの効果は、フレームコンセプトにおけるフレームの確認であり、足が後方に流れることを空間的に防ぐことである。50-100m行うとよい。

f:id:Tomo-Cruise:20170527073009p:plain5)前方にパートナーを伴って、ストレッチコード使用Partner Running In Front, with Stretch Cords: Fig.38.7)
 あなたとパートナーの両足首の同じ側にストレッチコードを繋ぎ、前方を走ってもらいます。パートナーにはテンポを上げてもらい、その際の脚を引き上げる速さを維持することを強制的に学びます。400m程度の距離までで練習します。本来のポーズ技術が自分で考えていたよりも違うものだとはっきりと分かる練習の一つです。

f:id:Tomo-Cruise:20170527073059p:plain6)並走、ストレッチコード使用Side by Side Running, with Stretch Cords: Fig.38.8)
 パートナーに並走してもらう際に隣り合う片側の足首にストレッチコードを繋ぎます。パートナーにテンポを上げてもらい脚の引き上げを同調させて、引き上げのピッチを学びます。400m程度の距離までで練習します。

f:id:Tomo-Cruise:20170527073202p:plain7)パートナーによる引き上げ操作Partner Controls Tension: Fig.38.9)
 両脚にストレッチコードを装着しパートナーに後方でそのコードを持って走ってもらいます。パートナーに後方から脚の動作を観察してもらいピッチをコントロールしてもらいます。200m程度まで緩急をつけて練習します。

f:id:Tomo-Cruise:20170527074315p:plain8)上り坂ランニングUphill Running:Fig.38.10)
 脚の引き上げに集中して行いましょう。決して脚を地面に押しつけてはいけません!ストライドは短めにピッチを上げてテンポよく走りましょう。緩やかな坂道から始めて様々な斜度の坂で試してみてください。

f:id:Tomo-Cruise:20170527202024p:plain9)階段ランニングStair Running: Fig.38.11)
 階段といっても、スタジアムみたいなところで練習するわけではありません。トレーニングではなく、反復練習(ドリル)として実践しましょう。1回、10-15段くらいから20段まででよいでしょう。階段から脚を引き上げる際、リズムを一定に保ちます。軽やかでリズミカルに階段を駆け上がりましょう。

 これらのドリルは20-30mの短距離で試してください。ドリルの意図するところは、あなたの既存のランニング技術とドリルの感覚との違いをその場で感じ取ることなのです。また、時にはドリルの様子を動画で撮ってスロー再生で分析することも役に立ちます。脚が垂直に引き上げられている適正技術と脚が後方に残っている適正でない技術との違いがはっきりと見て取れるでしょう。
 さらなる技術の改善には、遊脚の膝関節を柔軟に使うことが求められます。これにより脚を短く使うという効用があり、脚の振子動作を軽減させることにもなる。振子動作が短くなれば、その分、動作速度は速くなる。それに加え、脚を前に運ぶあらゆる動作を軽減させ筋肉の弛緩を促進させる働きもある。膝関節の柔軟性によって、余分な動作を軽減させて敏捷性を上げ、筋肉の緊張も和らげるのです。

ハムストリングスによる過度な引き上げ

 脚を後方に残してしまう他のエラーを診ていきましょう。次も動作を軽減させるという流れを引き継いでいます。それは過度な引き上げの問題です。脚が地面を離れた後にハムストリングスが引き上げを保持することから生じる問題です。ハムストリングスによる引き上げ時間が長いほど、脚が身体を追っている時間も長引きます。引き上げが続いている状態では、前方に振り出すことができません。それほど多くはありませんが、過度な引き上げが筋肉を傷め故障につながることもあります。
 この問題へ対応する特定のドリルはいくつかありますが、まずはハムストリングスが担う役割の適正なイメージを持たなければなりません。車のエンジン内のピストン内燃機関を思い浮かべてほしい。機関内では動作を長引かせるようなことは起きえない。その動作を一回の発火から始まる。その発火によってエネルギーが解き放たれてピストンロッドを動かし車を前進させるのです。
 類推して考えれば、あなたの足が地面と接触する瞬間が、あなたのハムストリングスの発火のタイミングなのです。一回の素早いハムストリングスの収縮が、脚を地面から解き放ち、またその発火によって弛緩した脚を上方に動作させるのです。足が地面から離れる際のすべての動作はハムストリングによって行われているのです。脚自体は弛緩しており、慣性と勢いによって前方に動くのです。
 これまでのエクササイズの多くも過度な引き上げに対処できるが、このエラーに対しての特定の対処法もいくつかあります。

f:id:Tomo-Cruise:20170530054232p:plain1)パートナーに引っ張ってもらうPartner Pulling Forward: Fig.38.12)
 パートナーに前方を走ってもらう際にストレッチコードをあなたの足首に取り付けて引っ張ってもらいます。前方に引っ張られることによって、あなたの足首が尻の後方まで(骨盤の水平線を越して)上がってしまうことを防ぐのです。100mまで実践したら、コードを外して走ってみて。その効果を感覚を確かめてください。

f:id:Tomo-Cruise:20170530054131p:plain2)ストレッチコードを使用しその場で走るRunning In Place, with Stretch Cords: Fig.38.13)
 ここではストレッチコードを使用するがその場で脚の引上げを行います。支持脚の交替に集中し身体のバランスを維持します。感覚的な観点ですが、支持脚をもう一方の遊脚が落ちる前に、その遊脚のあった場所に持っていくことをここでの目的とします。もちろん実際には不可能です。しかし感覚的に試みることによって遊脚が自然と弛緩しソフトに着地するようになるのです。1セット、20-30回行います。

f:id:Tomo-Cruise:20170531051429p:plain3)ストレッチコードを頭上まで持ち上げて走るRun with Stretch Cords Overhead: Fig.38.14)
 少し変わったバリエーションではあるが、足首に装着した長めのストレッチコードを頭上持ち上げて走ります。これによって強制的に脚を尻の真下に垂直に持ち上げ、ハムストリングスの初期発火をより強調させます。少しの距離から試し、100mまでの練習にとどめます。

  再度確認しますが、これらのドリルはフリーランニング(何も身につけない普通のランニング)と共に実践してください。よりお勧めなのは、ドリルの前後にフォームの動画を撮ってもらいエラーが修正されているかを確認することだ。動画を検証する中で、ランニング中に感じていることと動画のイメージを同調させるよう努めるとよいでしょう。心の中にイメージを焼き付けるよう集中しましょう。その土台ができれば、いつでも適正なフォームでランニングに臨めるようになるでしょう。

 

空中でのエラー

 以前にも指摘したように、脚が空中にある間のエラーは動作を怠っていることに原因があることはなく、過度な動作に原因がある場合が多い。 遊脚が身体を通過するにあたって、あなたは大腿を前方・上方に動かしているか、地面に向けて強制的に降下させているか、または両方の動作を同時に行っているかでしょう。
 無理もないでしょう。我々の多くはランニングのイメージをこんな風に捉えていることが多いのですから:地面を蹴って推進力を生み出す。もちろん、ここまでテキストを読んだあなたはポーズメソッドの概念を学びランニングはつまり、身体に力を込めずに解き放ち重力(引力)を利用して推進力を生み出すことだと理解したことでしょう。しかし、ランニングフォームのように身体に染み付いた習慣化した動作はそんな簡単に変えることができないのも事実です。自分では筋肉を弛緩させて走っていると思っていても、実際は余分にエネルギーを使って推進力を生み出そうとし、おまけにそのせいでスピードが落ちているというランナーは存在します。
 f:id:Tomo-Cruise:20170601054238p:plain 大腿を引き上げることは、エネルギー浪費以上に無駄な動きです;遅い振り子のように上方半分に弧を描く動作です(Fig.38.15)。大腿を懸命にもがきながら上方に上げている最中に、身体は引力(重力)によって地面に降下し始めるのです。こうして高く持ち上げられた脚は、身体の降下とシンクロ(同調)して強制的に地面に叩きつけられるのです。実際、あなたが腿の力で推進力を得ようとすれば、おのずと地面を蹴ることにつながります。そして腿の上方動作は、脚の引上げ時だけ使用され、その時点では弛緩させるべきハムストリングスを無駄に働かせてしまうのです。結論として、腿を上げ過ぎるフォームは、地面を蹴飛ばしてしまうことによる身体への余計な衝撃に加え、本来の約2倍の労力をハムストリングスにかけてしまうことになるのです。
 腿によって推進してしまうエラーを修正する一連のドリルは、遊脚を前方に振り出すことを制限することが主となります。今までの修正ドリルと同様に、はじめは動作の制限を受け入れることに意識をもって実践し、その後にドリル中の身体感覚を得るよう努めてください。

f:id:Tomo-Cruise:20170601054449p:plain1)パートナーの後方を走るRunning Behind Partner: Fig.38.16)
 このドリルではパートナーの肩に手を置き共に走ります。そして腿が前方に振り上げられることを制限するのです。要するにパートナーがフレーム理論における枠の前方の壁の役割を果たすのです。もし腿を使って前進しようとすれば、すぐに脚がパートナーにぶつかってしまうでしょう。前面にバリアがあることで、脚を垂直方向に上げざるをえなくなります。パートナーの後ろを走りながら感覚にも意識を向けて100mまでの距離で実践してください。そしてパートナーを外し、覚えた感覚で思い出しながら走り、フォームを調整してください。

f:id:Tomo-Cruise:20170601054555p:plain2)後方で手を握って走るRunning With Arms Behind: Fig.38.17)
 動作を制限する意外にも効果的な方法は、単に両手を後ろで握り、そのままぶら下げるだけなのです。遊脚を前方に振り出すことを制限する以外にもいくつかの効用があるのです。もし肩をうねらせながら走る癖がある場合(これもエネルギー浪費)、後ろで手を握った状態ではその癖は矯正されます。また、接地時に足首を支点にして足で半円を描いてしまっている場合(踵から着地してつま先から離れる)、これも修正されるでしょう。後で手を握っている場合、つま先から離地することができなくなります。長距離走をしている最中のチェック作業にもこの方法は有効でしょう。一定の距離に達したら走りながら背後で手を握ってみて、ストライドや接地での感覚に変化があるのなら、走っているうちに過去の癖が出てしまっていると判断してよいでしょう。

 

着地時のエラー
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f:id:Tomo-Cruise:20170602060034p:plain 身体の真下に足を柔らかく接地させるという動作は単純に思えるだろうが、この動作のエラーによって様々な問題を引き起こしてしまっているランナーの何と多いことか。接地時のエラーはランニングによる故障の原因のかなりの割合を占める元凶となっている。このエラーとは具体的にはオーバーストライド=身体の前方での接地 である;脚を伸ばしての着地(Fig.38.18)、また踵での着地(Fig.38.19)。そして積極的着地=筋力を使って脚を地面に降下させることが挙げられる(Fig.38.20)。
 これらのエラーの修正の前に、なぜエラーであるのかの認識が必要です。仮にあなたが以前には適正なランニング技術とされてきた、踵から接地して、足をローリングさせて、最後につま先から離地することをいまだに少しでも信じ込んでいるのであれば、母指球での接地は無理なことでありポーズメソッドで走ることもできないでしょう。
 踵着地についてもう少し詳しく見てみましょう。踵着地はまず、脚が身体の前方にあることが前提となります。ここに多くの人が走ることが何であるかを勘違いしてしまう原因があるのです。脚を前方に振り出すことにより身体を前進させることが自然だと思ってしまうのです。技術的観点で検証する前に、裸足でアスファルトの上を踵着地で走ってみればわかります、それがいかに狂気の沙汰なのかが。
 もしあなたが先入観なくアスファルトを裸足で走らざるを得ない状況になったのであれば、自然に足前部での接地をしていることに気付くでしょう。なぜならそれが衝撃を和らげることを身体は知っているからです。参考に、1960年にローマオリンピックで優勝したエチオピアアベベ・ビキラ選手のビンテージものの映像を観てほしい。安心してください、彼は踵から着地していませんから。彼の偉業(裸足でマラソン優勝)を遠い昔の話だからと侮ってはいけません。タイムは当時の世界記録である2時間15分16秒であり、さらに彼はゴール直後のコメントで、同じペースでもう1回走ることもできると豪語するほどダメージを受けていないのだ。
 f:id:Tomo-Cruise:20170602060457p:plain 現在のクッションの効いたランニングシューズは不適正な着地での衝撃を和らげ、適正な着地技術が自然と身に着くのを阻んでいるといえる。踵着地は足が地面に張り付いている時間を伸ばしているのです(Fig.38.21)。そしてピッチを遅め、推進力を奪い、関節・靭帯・腱への負担を増大させ、本来ランニングから得ることができる引力(重力)による自然エネルギーを帳消しにしてしまうのです。
 母指球付近の着地に対する適切な理解を得るために、次に挙げる簡単な概念を知ってもらいたい。着地時間が長ければ長いほど、ブレーキ作用が増し、推進力は失われる。言わずもがな、引力(重力)の力の効力もより失われてしまう。これを是正するには、ランニングフレーム内に収まっている脚を身体の真下に着地させ、足が地面と接地している時間を極力短くすることが必要となる。端的に言えば、接地時間を短くすることが速く走ることなのです。

f:id:Tomo-Cruise:20170609054529p:plain1)ポニーThe Pony : Fig.38.22)
 シンプルなドリルほど完璧にマスターすることが難しいといえる。ポニーは適切な技術の土台をつくるドリルだが、シンプルだからこそ完全に正しく行わないと意味がないと言える。行うときの注意点は、重心を片脚から片脚へ移す際、最小の力で、最小の動作幅で、前に進まず、完全なバランスを保つことだ。
 バランスを保つのに、片脚の母指球ともう一方の片脚の地面に触れるか触れないかのつま先を接地点として使います。重心を素早く替えて、左右の足の接地点も交替します。はじめは重心の交替を一回ずつオーバーに行い、左右交替する前にポーズ(合間)を入れて、完全にバランスを保っているか、脚は身体の真下に着地しているかなどを確認します。ドリルに慣れてきたら30秒くらい連続して行いましょう。

f:id:Tomo-Cruise:20170609054737p:plain2)ストレッチコードの両端を腰と足に (Cords Around Waist, Tied To Foot: Fig.38.23)
 ストレッチコードの一端を腰に巻き付け(もしくはベルトに結び付け)、もう一端を足に結び付けてドリルを行います。コードが脚をガイドする役割を果たすのです。コードに反発力によって足は真上に上がり、また戻すにはコードの抵抗の少ない身体の真下への軌道を取ることでしょう。
 コードをこのように取り付けた状態で前出のドリルや色々な練習に臨んでみてください。タッピング、ポニーまたはトレイルランニングに至るまで。コードによる垂直な脚の引上げにより、自動的に足は適切な位置(身体の真下)に着地することでしょう。

f:id:Tomo-Cruise:20170609054832p:plain3)芝生上での裸足ランニング (Barefoot Running on Soft Grass: Fig.38.24)
 裸足になって芝生の上を少し早歩きしてみましょう。踵着地と比べて足前部(フォアフット)着地の感覚がよくわかると思います。約30mの距離を早歩きを1セットとします。
 裸足ランニングによるフォアフット着地を身に着ける過程の初期に、ふくらはぎの筋肉痛が発生することがあります。これはよくあることであり、気にすることはありません。数週間経てば身体が新たなランニングフォームに適応してきて筋肉痛は発生しなくなるでしょう。あるポーズメソッドの修得者は「ポーズメソッドで走り始めた時に、ふくらはぎの筋肉痛が時々気になったが、以前苦しんでいた膝や腰の痛みは無くなりました。」と言っている。

f:id:Tomo-Cruise:20170610201901p:plain4)砂上での裸足ランニング (Brefoot Running on Soft Sand: Fig.38.25)
 芝生上でのランニングに近いドリルであるが、砂上でのランニングにはさらにいくつかの恩恵がある。ローテクではあるが、あなたのランニングストライドを分析する有効な手段なのです。まず50mほど砂上を走ってみて、その足跡を戻って観察してみましょう。今だ踵着地をしていたのなら、足跡をみればすぐに判明するでしょう。次にチェックするのは足跡の深さです。支持脚が砂上と接する時間が長いほど、沈み込みも大きくなります。また地面を蹴飛ばしている着地をしている場合も足跡は大きく沈み込んでいることでしょう。足跡が浅くなるようにフォアフット着地で軽やかな走りができるまで練習しましょう。

f:id:Tomo-Cruise:20170610202011p:plain5)クリスクロスランニング (Criss-cross Running: Fig.38.26)
 前出ではあるが、このドリルはフォアフット着地の動作を強化するにはうってうつけです。まず片側に傾くことから始め、次に素早くクロスステップを踏みます。踵着地と長い着地を封印する動作なのです。この動作を速めるには支持脚の交替を続けるしかないのです(ステップ幅を広げることでは動作を速められない)。

 これからの練習においては着地について次のことを念頭においてほしい。
a) 母指球付近で着地すること b) 尻の真下で着地しているか意識すること c) 着地時に膝が軽く曲がっていること d) 軽やかに力を抜いて着地すること

中間姿勢でのエラー修正

 f:id:Tomo-Cruise:20170612054423p:plain 毎回の着地のたびに完全なランニングポーズ姿勢(Fig.38.27)を維持できているでしょうか。外見の形だけではなく、感覚や意識も維持できていなくてはなりません。感覚的には、身体は弛緩(リラックス)して、バランスが取れており、弾力を備えていて、そしてフレーム内にコンパクトに収まっているかを確認します。意識的には、様々な部位に対するバラバラな働きかけが、一つの効率的な人体力学の操作装置へとまとまるように集中しているかを確認します。そして最大限の出力を生むために、最小限のエネルギー使用で済むように常に心がけましょう。最も細心の注意を払うべきは、単純な動作であるが、重心を片方の脚からもう一方へ出来る限り微妙な(わずかな)動きで移していく動きであり、その動作が推進力の抵抗とならないように心掛けなければならない。
 以上の概念を強化するドリルは、ランニングポーズを完成させるのに必要な微調整を施すことを目的としている。

f:id:Tomo-Cruise:20170612054639p:plain1)メディシンボール上でバランスをとる (Balancing on Medicine Ball: Fig.38.28)
 実にシンプルなドリルです。メディシンボールの上でランニングポーズ姿勢をとるだけです。足元のメディシンボールは転がりやすくはありませんが、身体にアンバランスがあれば(重心がずれると)容易に姿勢を乱します。もし姿勢を保つのに各部位の末端筋群を懸命に使っているのであれば、あなたのランニングポーズ姿勢はあなたが思っているほど軽くバランスが取れているとは言えないでしょう。ボール上で姿勢を楽にリラックスしてとれるようになるまでトライして、このドリルでポーズ姿勢をマスターしましょう。

f:id:Tomo-Cruise:20170612054757p:plain2)ランニングポーズ姿勢でホップする (Hops in Running Pose: Fig.38.29)
 ランニングポーズ姿勢で、その場で、もしくは若干前進しながら軽くホップ(飛び上がる)します。ホップという強勢を入れるのは、身体のリラックス状態とバランスの維持を覚えさせるためです。ある大きな障害物を飛び越えるのが目的ではありません。真の目的は、最小限の力と筋肉弾性を活用して、ハムストリングスを素早く収縮させて支持脚(着地脚)を一瞬にして地面から抜くことなのです。

f:id:Tomo-Cruise:20170612054901p:plain3)縄跳びエクササイズ (Jump Rope Exercises: Fig.38.30)
 縄跳びは、おおよそ必要最小限の力を適応させるうってつけのエクササイズでしょう。縄跳びの基本は、足の下にロープが通過するわずかの隙間を開けることです。高く飛んではいけません。単に支持脚を交替し、身体のバネを活用してわずかな隙間をつくるのです。また、踵ではなく母指球付近で着地することも忘れてはいけません。

 これらのドリルを実施した後には必ず少し走ってみて、各ドリルで得た感覚を実際のランニングに取り組むよう心がけてください。常にランニングポーズ姿勢をとること、力まずに素早く脚を交替させることを意識してください。

離地時のエラー

 足が地面から離れる(離地)場面が最後にくるなんて変だと思っていませんか?様々なランニングの解説書では、離地時のノウハウについて割いてあるページが多く、前へ進むために「押す(push)」とか「駆動させる(drive)」などの用語が目立っている。テキストをここまで読み進めてきた読者ならお分かりだと思うが、私からのアドバイス「何もするな(don't do it)」だ。
 身体を前進させねばと考える代わりに、どの力がより大きく普遍的なものかを考えるように切り口を変えてみよう、個人の筋力か・引力(重力)かを。もう少し具体的に、急勾配の下り坂を駆け下りていく場合を考えてみよう。マラソン経験者なら分かる通り、ここでの問題は速く走ることではなく、速度が出過ぎてしまうことだ。どのようにしてスピードをコントロールするかが課題となります。
 ポーズメソッドの全体的な概念は重力を開放することであり、平地で効果を発揮するものだ。支持脚を身体の下から抜き重力に動作を委ねるのです。坂道で勢いがついていた時と同じようにするのです。重力に逆らういかなる動作も速度を落とすことにつながるのです。「離地」に内在する概念が、重力に逆らうことなのです。地面を足で押すということは実質的に重力に逆らっていることになるのです。そうしてはいけないのです。
f:id:Tomo-Cruise:20170614052404p:plain脚を伸ばすな。つま先から離地するな。地面を蹴るな=押すなFig.38.31)。
 ここでひとつ、平地でどのように以上のことが機能しているのか類推してみよう。オートバイに1本のストレッチコードで繋がれていると想像してください(Fig.38.32)。
 f:id:Tomo-Cruise:20170614052620p:plainバイクの生み出す力が坂道を駆け下りる状況をつくります。もしあなたが脚を伸ばしつま先から地面を押し出してついて行こうとするならば、身体が跳ね上げられ、それを吸収しようと全骨格に衝撃を受けて、挙句の果ては顔面から突っ伏すことになるでしょう。しかし、もしあなたが脚を地面から単に抜いて、支持脚の交替を素早くできるのであれば、スピードについていくことができるし、姿勢も崩さないでいられるかもしれない。バイクの力を重力に置き換えることができれば、この類推による感覚を獲得できたと言ってよいでしょう。やるべきことは、弛緩状態をキープして重力(引力)に身を任せることなのです。それがポーズメソッドなのです。
 離地時のエラー修正にはどのドリルが向いているか?答えは全てです。この章で紹介したドリルは全て、脚を地面から抜き重力を開放するにあたって、弛緩状態や柔軟な姿勢の維持を促進させるのです。これ以上に効率的なことは有り得ないのです。