読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Pose Method of Running ポーズ・ランニング

ランニングフォームを意識して走力を上げよう!

Pose Method of Runningのテキスト(英書)の要約や原文と対訳を紹介しながら、アメリカの人気ランニングフォーム理論について考察してみる

37 エラーの認識と修正 RECOGNIZING & CORRECTING ERRORS

練習時やレースでの痛み・故障はフォーム見直しの兆候だ!

Pose Method of Running, Chapter 37, p261-265, 要約、一部本文と対訳

  このセクション(第6節)では多くのランナーが起こしてしまうエラーを予想し、それらを修正すべく特定のドリルを処方をしていきます。もちろん、エラーは修正する以前に認識され、分析され、理解されなければなりません。エラーの一般的定義は、その基準や正しい姿からの逸脱です。もし、ランニングフォームが人それぞれに違って当然だという説に則れば、エラーを認識すること自体が不可能だと言えます。
 f:id:Tomo-Cruise:20170513055935p:plain しかしポーズメソッドではランニング技術の正しい基準をはっきりと定義しているので、ランニングフォームを分析する手段を講じることができるし、エラーを見つけて修正することができるのです。ポーズメソッドの主な構成要素は次のようにまとめることができます。

1)ランニングポーズ基本姿勢を利用する
両膝は常にやや曲げられており、横からはS字のようなスプリング姿勢を維持し支持脚は母指球で地面と接している

2)前傾姿勢自重落下する

3)筋力弾性を利用する

4)支持脚を地面から直線起動で引き上げる

5)脚の引き上げにハムストリング(裏腿)を使う

6)ランニングフレーム内に身体をおさめる

7)筋肉の弛緩を維持する

  仮にこれらの原則に則っていれば、そのランニングフォームはバランスが取れており、身体の各パーツが体幹と調和した動きとなていることが客観的に見て分かるはずである。正しく走れていれば、腕や脚の激しい動きと体幹の前進移動がぎこちなくなるような逸脱は起きないだろう。
 f:id:Tomo-Cruise:20170513060308p:plain逆に間違った走り方をしていれば、その逸脱さは時に微妙ではあるが結構目立って現れるでしょう。丹念に磨き上げた乗り物に見えるところが故障車のように見えたり、一体化した物体が道を移動するように見えるはずがバラバラに動く部分の集合体がよろめいているように見えたりするのです。例えると、同じ曲の楽譜を見ている演奏家たちが皆、指揮者を無視しており、演奏はしているものの一つの曲にはなっていないといえるでしょう。
 正しくポーズメソッドが実践できているかを感じ取るのは簡単なことではありません。ポーズメソッドの根本的概念を真に理解していたとしても、走っている時の感覚を自分で理解するのは困難だといえます。できれば、パートナーやコーチにフォームを客観的に観察してもらいポーズメソッドのフォームをチェックしてもらうのがよいでしょう。

Any hint of overuse injury should be a signal to recheck your style and correct emerging problems. In your old running style, an overuse injury might have indicated worn-out shoes, but with  proper Pose style that is much less likely to be the case. And certain specific injuries wil also tell you the cause. If, for example, you begin suffering from shin splints, you can be virtually certain that you are landing with your foot out in front of your body.

 走り込みによる故障・痛みが発生した時は、フォームを再確認し将来起こるであろう問題点を正す機会が訪れたと認識すべきです。従来の走り方においては、走り込みによる痛みの発生はシューズのインソールが擦り切れたサインなどであったかもしれませんが、適切なポーズメソッドによる走り方においてはそのようなケースはまれです。ある特定の部位の痛みは原因があるのです。例えば、シンスプリント(向こうずねの痛み)に苦しみ始めたのであれば、大抵は身体の前方で着地してしまっていることが原因と言ってよいでしょう。

  f:id:Tomo-Cruise:20170513060632p:plainランニング技術の問題点が判明した時は、原点に立ち返り、ポーズメソッドの力学を理解しているか、ポーズメソッドの適切なビジュアルイメージが思い描けているか、実践した時の感覚が適切であったのかを確認する必要があります。
 根本的概念を理解せずに、また適切なランニングの感覚を獲得せずに、ただ単に物理的にフォームを変化させて問題点を修正しようとしても、その問題点はきっと再発してしまうでしょう。問題点の修正は単なるその場しのぎの解決法では本質的な解決とはなりえません。ランニングに対しての包括的なアプローチを根本から再構成しなくてはいけません。基本から見直す必要があるのです。
 最後に、ほとんどの問題点への解答はシンプルであることを覚えていてもらいたい。「余計なことはするな!」である。問題点はおおよそ次のことが原因である場合が多い;力みすぎ・筋力に頼りすぎ。身体をリラックスさせて重力に仕事をさせるのです。
 

36 ランニングへの恐怖感を克服する OVERCOMING THE FEAR OF RUNNING

マラソンへの心的バリアを取り除いて記録に挑戦し続けよう!

Pose Method of Running, Chapter36, p247-258, 要約、一部本文と対訳

  ポーズメソッドランナーを目指してここまで段階的に勉強してきました。ランニングは実際、学び上達することができるスキルスポーツであるという大前提を受け入れるところから始まり、次にポーズメソッドの土台を形成するいくつもの概念を知的レベルで学び、それを新たなスタイルとして肉体的な段階に落とし込んできました。そしてこの節では強度調整の仕方を学び、その新スタイルを活用すべく身体を最適化してきました。
 ほぼ学ぶべきことは学び終えたと言ってよいでしょう。以前よりも走力は上がったはずです、しかも故障も減ったのではないでしょうか。残るは技術的訂正を最終章でチェックするだけです。あなたの目標が健康増進やファンランであれば、この章を飛ばして最終章に進んでください。ぜひ、ランニングを生涯スポーツとして楽しんでください。
 しかし、競争に勝ちたいという本能がまだ少しでも残っていて、自己記録を伸ばすべくレースに参加し続けようというスタンスであれば、挑戦は始まったばかりなのです。なり得るベストなランナーへの探求のスタートラインについたのです。ここまではランニングの仕組みの勉強でした、次はランナーになるための精神論も含めた勉強となるのです。
 ポーズメソッドの技術を習得するにあたり、はじめは当惑したり、強度トレーニングにひるんだりと内的な「こんなことをして走力があがるのか?」というささやきと戦ってきたことでしょう。この第5節の最後の章で、いわばテキスト中の最も重要な章ともいえるここで、最高のパフォーマンスを引き出す、技術・耐久性・それらと精神状態の共生関係について論じていきます。
 技術とスピード・耐久性の関係はそれほど複雑ではありません。ランニング技術が完璧になるほど次のことを促進させることになります:エネルギー浪費の削減・筋力のスムースで協調した動き・筋力弛緩・関節、靭帯、腱への衝撃減退。逆に技術が身についていないと次のことを引き起こしてしまうでしょう:無駄な動作・筋肉の張り・関節、結合組織への衝撃増加・それらからの複合的な影響としてエネルギーの浪費と故障リスクの顕在化。
 ランニング技術を完璧にマスターすることにより、ストライドから「跳ねる」動作を最小化させ、筋肉の弾力性を促進させて、ランニングエコノミー(燃費)が上がるのです:技術と耐久性は比例するのです。しかしながら、我々のパフォーマンスを阻害している他のものが存在するのです。驚くことなかれ、それは心の中に存在するのです!
 「健全なる精神は、健全なる身体に宿る」という格言は、健康な身体を持つ者は健全な魂を持つべきという意味合いがあるが、その逆もまた真といえる。健全な魂が欠如していれば、真に健康な身体を持っているとは言えないのです。
 ランニングでの精神状況は次の3つの段階で論じることができる:the mental(内的)、the psychological(心理的)、the sprirtual(精神的)。これら3つの段階が相互に影響しあいパフォーマンスの潜在能力を発揮させるのです(または発揮させない)。このランニングと精神状況の関連性を示す2つの例を紹介しましょう。
 

f:id:Tomo-Cruise:20170506060518j:plain 一つ目はマラトンの戦いでの有名なフィリッピデスの逸話です(フルマラソンの原型になったといわれる物語)。このギリシャ連合軍とペルシャ帝国軍との戦いにおいて、フィリッピデス(ギリシャ側)は飛脚として援軍要請にスパルタまで約230キロのトレイルを2日間で走破したというのです。ただし援軍はとても間に合わないという知らせを持ち帰ることにたったのですが…しかしギリシャの将軍はそれを知り、ペルシャ軍に奇襲を仕掛けて1/4の兵力にも関わらず見事に勝利したのです!そして将軍は勝利の知らせを心配しているアテネの人々に届けるよう、230キロ走破して間もないフィリッピデスに命じるのです(可哀そう)…そしてアテネまで約46キロ完走し(これがフルマラソンの原型)「勝ったぞ、喜べ!」と言ってその場で息を引きとったといいます。極論ですが、マラソンの原型をなった逸話が、ランニングの精神論を説明する一つなのです。いわゆる使命を受け、雑念の入る余地もなく、伝令を届けるために一心不乱に臨んだことで限界までパフォーマンスを引き出すことができたということの例なのです。
 二つ目は命には関わらないより一般的な話です。レースを何度も経験している人なら思い当たることだと思います。レース後に仲間と雑談しているときに「6キロ過ぎ、体調が最悪だったよ。」などと語ったことがないだろうか。しかし、レースのたびに自分自身には「次のレースは記録更新できそうだな、体調も調整したし。」などとも語りかけていたにもかかわらず記録を出そうと力んで、もがきながら走ってしまうとその努力に報われずに途中から失速してしまうものです。逆に気楽に走っているときこそ速く走れたりする。そうなのです。すべてが調和していて努力せずともパフォーマンスを発揮できる状態こそが目指すべき目標なのです。が、この状態に偶然でなく意識的に移行できるようになるには肉体的だけでなく内的、精神的なトレーニングが必要なのです。

 このテキストで第1章からここまで紹介されたきた個々の概念や身体の使い方や鍛え方は至って単純であるものの、それらをまとめて身に着けるのは簡単ではない。その第一歩はまさに内的なものと言える、これまでのスタイルを捨ててポーズメソッドを受け入れることを選択するということは。その次には肉体的な負担はまだ軽いが内的フィードバックは繰り返し必要となる段階です:着地は正しくできているか・脚を押し付けずにリラックスして落としているか・跳ねずに前進できているか…それぞれは単純な動作であるが同時にフィードバックするにはチェック項目が多く混乱でしょう。
 


 実際、ポーズメソッドの各構成要素を身につけるのは肉体的な領域よりも内的心的な領域の占める割合が多いでしょう。特に実践を伴う章からは精神的な疲労をより感じたことでしょう。身体に染みついた従来の走り方を脱して新たなフォームを身につけるための反復練習を普段のジョギングの替わりに行わなければならなかったのですから。
 すでにお気づきかもしれないが、ポーズメソッドは単に脚・腕や身体の力学的動作の集積以上のものなのです。複数の様相・側面から成る現象とでも言ったらよいでしょうか。その力学的側面の習得は、その理解度の深さと個人の意思の力が伴わなければ実践できないのです。
 あなたがオープンマインドで新たなことを受け入れる性格で決断力や集中力があれば比較的容易にポーズメソッドを身に着けやすいと言えます。が、常に疑りながら取り組んでいるのであれば、基本的テクニックでさえ身につけることは難しいでしょう。ゆえに肉体的なスキルを身につけるにはメンタルなエクササイズが根本的に必須となるのです。
 ポーズメソッドを身につける次の段階では実際に走りながらそのメンタル的技術を活用することが求められます。初期段階では、まだその走りの仕組みが自動操縦のように身についているとは言い難いと言えます。走行距離を伸ばしつつ集中力をもって身に着けていかなくてはならないでしょう。ここでも単にに肉体的な鍛錬によって身につくと勘違いせずに精神的な鍛錬であるという自覚が必要なのです。
 おおよそのランナーは、肉体的に消耗しきる以前に心的・心理的・精神的に疲弊してしまうと言ってよいでしょう。なぜ、そうなってしまうのでしょうか。何がランナーを実際に疲れ果てるもっと前にギブアップさせてしまうのでしょう。この章のタイトルがその問題解決のヒントなのです:ランニングへの恐怖感を克服することなのです!

Go back to the example where you might say to yourself, “I felt like sh-t from 4 miles on.” Why does this happen? The better question is more revealing, “Why did I train myself to make this happen.” Runners habitually underperform because they fear performing better. They build in their own obstacles and their disappointing performances are really nothing more than self-fulfilling prophecies. Why do you feel like sh-t after four miles? Because you wouldn’t have it any other way. That’s the bad news. The good news is that just as you have retrained yourself to increase your physical potential with the mechanics of the Pose Method, you can retrain your mind to overcome your self-created obstacles.

「6キロ過ぎ、体調が最悪だったよ。」とこぼしてしまう前述の例を再度考えてみよう。何故、そうなってしまうのだろうか?次のように言い換えれば分かりやすくなる。「何故、その距離で気分が悪くなるようなトレーニングをしてしまったのか?」ランナーはパフォーマンスが上がるのを恐れて、常に実力以下の力しか発揮しないのです。自ら障害物を設定し、自ら達成可能な予言によってパフォーマンスを下げるのです。6キロ過ぎに最低な気分になってしまうのは当たり前のことなのです。悪い知らせの次の良い知らせとしては、ポーズメソッドの手順にて再訓練し肉体的潜在能力を向上させたのと同様に、自ら設定した障害物を克服するべく精神力を再訓練することはできるのです。

Many of us like to use runs as a time to escape daily life, to think through problems, to get away from it all. In other words, when we run, we use our mental energy to deal with issues other than running. While this may be somewhat therapeutic, it won’t make you a better runner. Letting life’s problems weigh on your mind while you run is equivalent to carrying a 50-pound backpack and loading your arms up with logs. You just can’t run faster if you waste either physical or mental energy. If your objective truly is to become a better runner, you must set aside other time to think through your life so that you can approach your runs with a fresh and focused spirit.

ランナーの多くはランニングを日常逃避や嫌なことを忘れるためなど気分転換に活用しているでしょう。言い換えれば、走っている時にランニング以外のことに心的エネルギーを消費していると言ってよいでしょう。心の健康には良いかもしれませんが、走力は上がらないでしょう。ランニング中に様々な問題に心が囚われてしまうというのは、20キロ以上のバックパックを背負い丸太を抱えているような状態と同様なのです。肉体的だけでなく精神的にも浪費があれば、より速く走ることはできないのです。本当に走力を上げることが目標であるのなら、色んなことを考えるのは他の機会にして、走ることに精神を集中させて新鮮な気持ちでランニングに臨むべきなのです。

Another challenge for a runner is developing the ability to diagnose problems during a run and correct them. Failing to make the correct diagnosis can lead to the wrong “correction” and further erode your performance. A common problem among runners doing long runs is that they believe that fatigue had caused them to shorten their stride. The common diagnosis: increase muscular effort to bring the stride length back to where it was. The immediate result: increase heart rate, increased muscular tension, erosion of form and further diminished performance.

 ランナーにとってもう一つ訂正すべき点を挙げれば、走っている最中の問題点の診断・訂正の能力の改善でしょう。正しく自己診断ができていないことは、間違った「訂正」につながり、さらにパフォーマンスを損なわすことになるのです。距離走時のランナーのよくある間違いは、疲労がストライドを短くしてしまっていると勘違いしてしまうことです。その診断とは:ストライドをもとに戻すために一生懸命に筋力を動員すること。それによってもたらされるのは:心拍数上昇、筋肉緊張の増加、フォームの崩れ、そして更なるパフォーマンスの減退なのです。

The correct diagnosis is to increase the cadence, taking advantage of muscular elasticity and proper framing. This requires not increased physical effort but greater mental focus to re-direct the body to do what it does best, which is to take advantage of gravity to move forward. Remember, speed is a function of stride length multiplied by cadence. Studies have shown that even elite level runners will see their stride length reduced by as much as 20% during the course of a long race. However, speed can be maintained by increasing turnover. To do so requires conscious control not only to increase tempo but also to fight the temptation to actively attempt to increase stride length.

 ピッチを上げ、筋力弾性を活用しフレーム内で走るということが適切な診断から導き出されるべき対応です。これには肉体的な努力というよりは、重力を推進方向に利用するという身体の有効な使い方へ再び方向づけることに集中するという精神的努力が必要となります。速度=ストライド幅×ピッチという公式を思い出してください。エリートランナーでさえ長距離走においてストライドは2割の幅でしか減少しないことが調査の結果で明らかになっている。一方、速度はピッチを上げることによって維持できることが証明されている。ということは、速度を維持する秘訣はピッチを上げることを意識すると共にストライドを伸ばすという誘惑に惑わされないことにも意識することにあるのです。

  これまではランニングにおける心的な自制例を表層意識における抑制についてみてきました。これからは内面の奥深くでの表層意識深層意識が身体の抑制について微妙に拮抗している点についてみてみよう。現代に生きる人間といえども動物界の一部に属しており、野生の生存本能が深層には組み込まれている。よって外部の脅威を察知すれば身体を守り危険を避けるという手順を無意識に踏むことになるよう人間の器官は設計されている。 

f:id:Tomo-Cruise:20170506062118j:plain 長距離や負荷のあるランニングが身体に対する脅威として顕在化することがある。エネルギー浪費と関連して生理的・精神的な疲労により深層意識の奥深くから身体器官へ危険信号が発せられてしまうのだ。表層意識において尽力しようとすればするほど、身体は生命への脅威だと認識され何とかして抑制しようと無意識が働いてしまうことがある。その初期反応は意識上に現れる恐怖感ではなく、むしろ肉体的・感覚的なものであり、具体的には筋肉硬直化、熱を持った痛み、呼吸困難化、肋骨周辺の痙攣や心拍上昇などである。
 この時点では意識上において「前進、全速力」と指示だしを続けているものの、深層意識においては生命保護本能が働き、身体に真逆の指示を送り始めるのです。意識上ではその指示を無視していても、大体において深層意識が身体の器官に対して首を持ち上げ減速につながる動作への導くのです、ピッチを遅め、支持脚の着地時間を増やし、筋肉緊張を高め、体を後傾させ始め、前方に着地させ、フォームを崩し始めるのです;要するにあらゆる手段を用いてブレーキをかけ始めるのです。その上、さらに深層意識は不快感をも身体に送り始めるのです、「減速せよ、さもなくば調子を崩すぞ」と言わんばかりに。
 以上が長距離走における生存本能の障害であり、改善すべきポイントでもあります。事実、ここで起こっていることは生命を脅かせることではなく、単にそう解釈されてしまっているだけなのですから。その臨界点に到達するたびに深層意識が首を持ち上げ、それを繰り返すうちに身体に刷り込まれてしまうのです。そして表層意識までもが一定距離での減速を正当化することになるのです。
 深層意識が限界点を設定し始めると表層意識においてもそこが自分の限界点だと設定してしまうのです。これが6キロ過ぎに決まって不調になる原因なのです。臨界点に来る度にくどい言い訳をし続けて、結局何年も同じレベルに留まらせている根本原因なのです。
 「自分はエリートランナーじゃないし、ファンランで十分。」「スピードを出す必要なし。」「このコースは坂道が多いから。」「まだウォーミングアップだから。」これらは自らの怠慢を正当化する際限ない言い訳のほんの一例だ。先に述べたように、自分に限界を設定してトレーニングしている結果なのです。上達できないのは肉体的な問題であることはほとんどなく、精神的な問題であることがほとんどであることがわかったでしょう。
f:id:Tomo-Cruise:20170506064218j:plain しかしこの表層意識と深層意識のやり取りの中に解決の糸口があるのです。細胞を含めたあらゆるレベルの人間の器官は意識・無意識間(交感神経・副交感神経)の不断なる抑制・均衡のシステムが働いている。各器官はそれぞれの目的、必要性、本能や充足度を持っており、同じ器官がそれらの目的の達成を目指すので、意識・無意識間で拮抗することも起こり得る。一方が出れば、もう一方は引っこまなければいけなくなる。そして深層意識が勝ち表層意識まで支配してしまう…
 つまり表層意識のみで実力以上の走りを長時間試みると深層意識が打ち勝ち、警告を発してしまうということです。同じパターンを繰り返しても警告は鳴り止まないでしょう。深層意識も納得するようなゴールを表層意識でセットする必要があるのです。例えば現状で400mを75秒で繰り返しスプリントできているならば、いきなり60秒でのスプリントを試みると深層意識はパニックを起こして止めに入ってしまいますが、3-4か月かけて徐々に75秒から60秒に向上させていきながら信念を持って臨めば深層意識を納得させることができるでしょう。
 

f:id:Tomo-Cruise:20170506064808j:plainもちろん深層意識としての生存本能の働きが表層意識を無効にしつつ驚くべき強度や耐久性を発揮する場合もあります。猛犬の追いかけられて逃げ惑う場合などである。生命の危機を感じている限りはいつにもまして速く走っていることでしょう。「火事場の馬鹿力」「窮鼠猫を噛む」のことわざも同様に深層意識での生存本能が為せる技でしょう。
 幸いにも現代においては、そのような危機的状況に見舞われることはまれでしょう。ただ、我々の肉体的能力は表層意識のレベル以上の実力を持っていることは納得できるでしょう。我々の内にあるこの資源をいかに自発的に引き出すかが先に論じてきた課題なのです。
 f:id:Tomo-Cruise:20170506065355j:plain 技術・忍耐性・心理に関連する次の課題は、時間に関する考察です。我々の身体は実体として現在に囚われています。しかし心は過去に戻ったり、現在の問題とやり取りしたり、未来のことにふけったり自由自在に時間を行ったり来たりします。この時間を往来する心は、身体の働きと関係を断ち、ランニング効率に悪影響を及ぼすことがあるのです。
 長距離を走っている時によくある心の「逃避」先は未来でしょう。6キロ地点で身体の現状分析心をすっ飛ばして、心は42キロまでに何が起こるか考え始めゴールまでに如何に体調を維持するかを推測したりするのです。この未来予測によって精神は恐怖感を募らせて、身体の生理的・生体力学的側面が乱れ始めるのです。身体から脳へ避難信号が送られ、ストライドが乱れだり筋肉が痙攣を起こし始めます。
 身体トレーニングと同様に心的・心理的なトレーニングもランニングにとって重要なのは明らかでしょう。心を落ち着かせることができないと上記のように身体も反応してしまうのですから。包括的な鍛錬として精神的な領域に踏み込んでランニングに取り組む必要があるのです。
 前にも触れましたが、実力を出し切っている時はきつく感じることはあまりないのです。身体と精神を集中力をもって鍛錬すれば、実践時にはすべてがとても自然に感じるのです。 

f:id:Tomo-Cruise:20170506065917j:plain バスケットボールの選手で例えるなら、どんな位置や体制からでもシュートを決める絶好調の選手のようなものでしょう。このような選手の状態を「ゾーンに入った(in the zone)」と言います。どんなスポーツでもゾーンに入ると、身体と精神が完全に調和して自信がみなぎった状態になるのです。すべての動作が完璧で、完全な集中力をもって超絶技をこなすのです。実力を出し切れる・ゾーンに入るということは、身体が一連の鍛錬を経験し、技術が身についており、加えて完璧にメンタルコントロールができているという結果なのです。
 恐怖感は個人的な不安感の反映と言えます。未知のことや無知が感情の隙間を創り上げるのです。不安感を持ちながら走っているとその隙間が恐怖感を生み出します;負荷をかける、かけないことへの恐怖・怪我への恐怖・上達への恐怖・失敗への恐怖などを。
 幸いにもランニングへの恐怖感を克服すること時代はとても単純だと言えます。不安感から生じた感情の隙間を知識で埋めればよいのです。走り方を学び、エラーの認識方法を学び、そしてそれらのエラーをトレーニングやレースの最中に修正することを学ぶのです。肉体的な側面でランニング技術を習得していくのと同様にランニングへの恐怖感を克服することも習得することができるものなのです。
 あなたがポーズメソッドをランニングの自然体として身に着けた段階に達したのであれば、同時にランニングへの恐怖感を克服する基盤ができたと言えます。ランニングスタイルが洗練されていくと新たな自信が身につき、無自覚でもパフォーマンスに影響を与えていくのです。
 走り方を真に理解し、重力を推進力に変換するスタイルを身に着けたのであれば、ランニングがとても楽なことになっているはずです。そして周りのランナーたちの多くが走り方を真に理解していないことに気付くことでしょう。
 完全なランニング技術の仕組みと生理学的・精神学的能力の高い認識を持ち合わせることによって、あなたのランニングの実力レベルは新たなステージへと昇華します。ランニングを今までと同じスポーツと思えないくらいにランニングに対する観念が変化することもあるでしょう。開放された走りが可能となったのです;故障からの開放、猜疑心からの開放、そして恐怖感からの開放
 
 

 


 
 
 

35 柔軟性の強化 DEVELOPING FLEXIBILITY

ストレッチで身体をチューンナップしてパフォーマンスを上げよう!

Pose Method of Running, Chapter35, p223-246, 要約、一部本文と対訳

  仮にあなたが車か自転車のレースに挑むことがあるとすれば、十分にオイルを差したマシーンで臨むことでしょう。最適なパフォーマンスを引き出し、事故につながるような故障を避けるために当然、可動部にはオイルをなじませて滑らかな動きを確保しますよね。しかし市民ランナーの多くは「乗り物」に十分にオイルを差さずに走り出してしまう。そして十分にパフォーマンスを発揮させるチャンスを失うばかりか、故障を引き起こすリスクをも増やしてしまうのです。
 ランニングを断念してスイマーやサイクリストに転向するアスリートが多いのをご存じだろうか。悲しいことに彼ら彼女らはランニング自体が故障を引き起こす悪の元凶だと信じ込んでいることです。実際は、身体を柔軟性を保持して適切な技術を適用していれば永久に走り続けることができたであろうに。

 市民ランナーを柔軟性の強化から遠ざけている主な要因は次の2つであろう。一つ目は柔軟性とパフォーマンスとの関連性を見出せていないことだ。ランナーは実に実践主義であり、自身で走力が上がらないと信じ込んでいることに対して無駄な努力だと決め付けてしまっている。
 二つ目は時間だ。忙しい現代生活においてランニングの時間を割くこと自体が簡単なことではないだろう。一般市民ランナーにとってストレッチする時間を割くことはランニング自体の時間を失うことだと思ってしまう。しかし、それは走力を上げることに反しているのだが。ランナーは走るからこそランナーであり、走ること意外は時間を浪費だと思う人もいるだろう。
 しかし、「体にオイルを差す」時間は決して時間の浪費ではないのである。それはレーサーがガレージでレーシングカーに費やしている時間が無駄でないのと同様であろう。走る前に体をチューンアップすることはパフォーマンスを上げるためばかりでなく、故障のなく走り続けるためにも必要なことなのです。

 詳細な話の前に2人のプロアスリートの取り組みを紹介しよう。一人目は11回ものワールドチャンピオンに輝いた伝説的なプロサーファーのケリー・スレーターだ。彼はヨガの達人でもあり、驚異的な柔軟性を維持して身体をケアしており、タフなプロサーファイングの世界で最年少・最年長世界チャンピオン両方を獲得したのです。二人目は元プロサイクルロードレーサーランス・アームストロングだ(後にドーピングが発覚したが…)。癌の闘病生活から復帰した後も活躍できたことの秘訣に、彼は日課の1時間に及ぶストレッチを挙げている。

 

f:id:Tomo-Cruise:20170408070558p:plain いったい柔軟性の何が運動選手のパフォーマンスにとって欠かせない要素なのであろう。それには3つの要素が挙げられる:関節の可動性・靭帯および腱の柔軟性・筋肉の弛緩である。

 まず、関節について考察してみよう。あなたはつま先に楽に触れることができるだろうか? 身体が硬いのを加齢や生まれつきのせいにしていないだろうか。でも安心してください! 関節の柔軟性は一定の時間を割けば取り戻すことはできます!

Operating in close coordination with the joints are the all-important ligaments, cartilage and tendons, the connective tissue that acts as a buffer between the joints, bones, and muscles, keeping the whole operation running smoothly. As mobility is the prime consideration in the joints, elasticity is paramount in the connective tissue. Without sufficient elasticity, the connective tissue forfeits its role as a buffer and shifts the mechanical load of performance to the joints, bones and muscles, reducing performance and increasing the risk of injury.

 関節を密接に整合させながら体を動かす際、靭帯や軟骨そして腱、その全てが重要な役割を果たします。それらは結合組織と呼ばれ、関節と骨そして筋肉の間の緩衝材として働き、全体の動きを円滑に保ちます。可動性が関節の主な課題点であるが、結合組織においては柔軟性が最重要課題となる。十分な柔軟性がないと、結合組織はその緩衝材としての役割を失い、動作の(衝撃)負担は直接的に関節や骨そして筋肉に伝わり、走力を下げ、怪我のリスクを増大させることになるでしょう。

  優秀なランナーの走りを映像で見てみると、彼らの走りが一定の速度を維持しながらもスムースで力みがなく、楽に見えることだろう。それは錆びついた関節固まった結合組織のままでは決して実現できないことだ。まれに生まれつき柔軟な関節をもっているものもいるが、そうでなくとも、ちゃんと身体を手入れしてあげれば柔軟性を手に入れられます!

 関節の可動性エクササイズは、指から始め、手・手首・肘・肩・脊柱・尻・膝・足首、そしてつま先まで順を追って行います(Figs.35.2-10)。この基本的なエクササイズはそれほど時間をかけずに行います。関節をあらゆる方向に動かすことによって可動域を広げていきます、捻ったり、曲げたり、伸ばしたり、動かしたりと。時間をかけずといっても急いてやるのはだめです。動かしている関節が温かくなっていくことや柔軟性を取り戻していくのを感じ取れるように少しずつは時間をかけて行ってください

 

f:id:Tomo-Cruise:20170408072405p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072415p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072420p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072430p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072436p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072442p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072448p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072453p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072459p:plain

 

  関節と結合組織を動かしていくプロセスは局部的でも複合的でもある。特定の関節を意識的に動かすこともあれば、関節や結合組織をともに連動させて統合的な動きを意識することもあるのです(Figs.35.11-25)。

f:id:Tomo-Cruise:20170408072838p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072845p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072851p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072858p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072903p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072911p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072917p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072923p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072930p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072935p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072941p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072947p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072952p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072958p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408073003p:plain

  いくぶん矛盾に聞こえるかもしれないが、筋肉の能力を適切に発揮させるのは、いかに筋肉を弛緩(リラックス)させることにかかっているといえる。弛緩した筋肉こそがスムースなパフォーマンスを可能にするのです。張った筋肉ではギクシャクした動きを引き起こしパフォーマンスを低下させるだけです。オリンピックや国際大会で活躍するランナーが走っているスロー画像を見たことがあるかと思いますが、彼らはそのスピードを保ちながらも力んでおらず、筋肉は弛緩していること(固まっておらず液体のように揺れている)が映像からも見てとれると思います。
 しかし、ベストの力を発揮しようとしているときに筋肉を弛緩させるとはどういう状態なのであろうか。ところで、筋肉とは伸展と収縮によって機能します。そして筋肉は伸びきっている(伸展)ときに弛緩していないと断裂してしまうこともあるのです。筋肉は弛緩した状態を保つことができる範囲で伸展させるのが効果的といえるのです。柔軟性を強化するトレーニングで重要なのは、ただ単に筋肉を伸ばすことではなく、弛緩した状態を保ったまま伸展する範囲を広げていくことなのです。
 興味深いことに、柔軟性を強化するトレーニングの基本は精神的な面から始まります。心理療法でも広く使われている技術で、それぞれの筋肉や筋肉群に重量・温度そして弛緩の感覚に集中するというものです。1920年代にJ.H.シュルツによって提唱された自律訓練法から発展した心像トレーニングであり筋肉の柔軟性に実際に効果的であることが実証されている。
 肉体的領域においては、特定の筋肉や筋肉群を固定ポジションで十分に伸展させ維持する次の一連のエクササイズを紹介しよう(Figs. 35-26-37)。伸展しきった状態を一定時間保持することが基本となる。これらは漸進的(徐々に進む)エクササイズであり、少しずつ発展していき、やがて十分な柔軟性が手に入ります。

 

f:id:Tomo-Cruise:20170412085123p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170412085137p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170412085150p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170412085158p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170412085210p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170412085220p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170412085230p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170412085239p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170412085248p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170412085256p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170412085307p:plain

  単純な前屈運動(つま先タッチ)を例にとってみよう。普段から習慣的にストレッチしていなければ足首にさえ手が届かないかもしれませんし、さらに足首に届いたとしてもそのポジションを数秒保持することも難しいかもしれません。3,4回以上十分に筋を伸ばせばつま先に手が届き、さらに10秒以上ポジションを保持できるようになるかもしれません。ストレッチを習慣化すれば、数週間後には掌で地面にタッチすることができ、30秒以上もポジションを保持できるくらいに柔軟性が増しているはずです。これは典型的な筋肉伸展であり、筋肉(と結合組織)が十分に伸展することに慣れ、そのことにより完全に弛緩することもできるようになったということです。そして全ての筋肉群において伸展時の弛緩状態を可能にすることはパフォーマンス向上に即座につながるのです。
 一人で行うストレッチが何時でもどこでも行えて便利であり効果的でもあるが、完全伸展を確実にするには他人や何かの支援が必要なこともある。特にパートナーに手伝ってもらうことによって自分で課した限界を超える柔軟性を得ることができる。この場合、バリエーションが2つある。パートナーが既に屈曲している方向にさらに押し込み可動域の幅を増すことが一つ。もう一つは、屈曲状態から元の状態に戻る際にその反対方向に抵抗をかけることです。その効用は能動的に屈曲状態から戻る際に筋肉に弛緩すること(リラックスすること)を教え込むことにあります。この屈曲状態から戻る際の抵抗を与えることを繰り返すことにより、筋肉は作業状態(収縮)から弛緩状態(伸展)へより迅速に移行するようになるのです。
 フリーウェイト(バーベルなど、ここではシャフトのみ)も柔軟性を促進するには効果的で(Figs.35.38-41)、同時に強度調整も行うこともできる。パートナーの支援を得ることと同様にウェイト(シャフト)の影響により自力での伸展より筋肉を伸ばすことが可能だ。またパートナーの反屈曲における抵抗と同様に弛緩状態を教え込むことの助けにもなる。

f:id:Tomo-Cruise:20170413194729p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170413200806p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170413200816p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170413200826p:plain

  f:id:Tomo-Cruise:20170414065253j:plainまた振子運動(スウィングエクササイズ)も柔軟性を促進させる別の方法だ。脚を振子のようにスウィングさせ可動域を広げて、通常よりも筋肉を伸展させ柔軟性を促進します。