Pose Method of Running ポーズ・ランニング

ランニングフォームを意識して走力を上げよう!

Pose Method of Runningのテキスト(英書)の要約や原文と対訳を紹介しながら、アメリカの人気ランニングフォーム理論について考察してみる

35 柔軟性の強化 DEVELOPING FLEXIBILITY

この記事をシェアする

ストレッチで身体をチューンナップしてパフォーマンスを上げよう!

Pose Method of Running, Chapter35, p223-246, 要約、一部本文と対訳

  仮にあなたが車か自転車のレースに挑むことがあるとすれば、十分にオイルを差したマシーンで臨むことでしょう。最適なパフォーマンスを引き出し、事故につながるような故障を避けるために当然、可動部にはオイルをなじませて滑らかな動きを確保しますよね。しかし市民ランナーの多くは「乗り物」に十分にオイルを差さずに走り出してしまう。そして十分にパフォーマンスを発揮させるチャンスを失うばかりか、故障を引き起こすリスクをも増やしてしまうのです。
 ランニングを断念してスイマーやサイクリストに転向するアスリートが多いのをご存じだろうか。悲しいことに彼ら彼女らはランニング自体が故障を引き起こす悪の元凶だと信じ込んでいることです。実際は、身体を柔軟性を保持して適切な技術を適用していれば永久に走り続けることができたであろうに。

 市民ランナーを柔軟性の強化から遠ざけている主な要因は次の2つであろう。一つ目は柔軟性とパフォーマンスとの関連性を見出せていないことだ。ランナーは実に実践主義であり、自身で走力が上がらないと信じ込んでいることに対して無駄な努力だと決め付けてしまっている。
 二つ目は時間だ。忙しい現代生活においてランニングの時間を割くこと自体が簡単なことではないだろう。一般市民ランナーにとってストレッチする時間を割くことはランニング自体の時間を失うことだと思ってしまう。しかし、それは走力を上げることに反しているのだが。ランナーは走るからこそランナーであり、走ること意外は時間を浪費だと思う人もいるだろう。
 しかし、「体にオイルを差す」時間は決して時間の浪費ではないのである。それはレーサーがガレージでレーシングカーに費やしている時間が無駄でないのと同様であろう。走る前に体をチューンアップすることはパフォーマンスを上げるためばかりでなく、故障のなく走り続けるためにも必要なことなのです。

 詳細な話の前に2人のプロアスリートの取り組みを紹介しよう。一人目は11回ものワールドチャンピオンに輝いた伝説的なプロサーファーのケリー・スレーターだ。彼はヨガの達人でもあり、驚異的な柔軟性を維持して身体をケアしており、タフなプロサーファイングの世界で最年少・最年長世界チャンピオン両方を獲得したのです。二人目は元プロサイクルロードレーサーランス・アームストロングだ(後にドーピングが発覚したが…)。癌の闘病生活から復帰した後も活躍できたことの秘訣に、彼は日課の1時間に及ぶストレッチを挙げている。

 

f:id:Tomo-Cruise:20170408070558p:plain いったい柔軟性の何が運動選手のパフォーマンスにとって欠かせない要素なのであろう。それには3つの要素が挙げられる:関節の可動性・靭帯および腱の柔軟性・筋肉の弛緩である。

 まず、関節について考察してみよう。あなたはつま先に楽に触れることができるだろうか? 身体が硬いのを加齢や生まれつきのせいにしていないだろうか。でも安心してください! 関節の柔軟性は一定の時間を割けば取り戻すことはできます!

Operating in close coordination with the joints are the all-important ligaments, cartilage and tendons, the connective tissue that acts as a buffer between the joints, bones, and muscles, keeping the whole operation running smoothly. As mobility is the prime consideration in the joints, elasticity is paramount in the connective tissue. Without sufficient elasticity, the connective tissue forfeits its role as a buffer and shifts the mechanical load of performance to the joints, bones and muscles, reducing performance and increasing the risk of injury.

 関節を密接に整合させながら体を動かす際、靭帯や軟骨そして腱、その全てが重要な役割を果たします。それらは結合組織と呼ばれ、関節と骨そして筋肉の間の緩衝材として働き、全体の動きを円滑に保ちます。可動性が関節の主な課題点であるが、結合組織においては柔軟性が最重要課題となる。十分な柔軟性がないと、結合組織はその緩衝材としての役割を失い、動作の(衝撃)負担は直接的に関節や骨そして筋肉に伝わり、走力を下げ、怪我のリスクを増大させることになるでしょう。

  優秀なランナーの走りを映像で見てみると、彼らの走りが一定の速度を維持しながらもスムースで力みがなく、楽に見えることだろう。それは錆びついた関節固まった結合組織のままでは決して実現できないことだ。まれに生まれつき柔軟な関節をもっているものもいるが、そうでなくとも、ちゃんと身体を手入れしてあげれば柔軟性を手に入れられます!

 関節の可動性エクササイズは、指から始め、手・手首・肘・肩・脊柱・尻・膝・足首、そしてつま先まで順を追って行います(Figs.35.2-10)。この基本的なエクササイズはそれほど時間をかけずに行います。関節をあらゆる方向に動かすことによって可動域を広げていきます、捻ったり、曲げたり、伸ばしたり、動かしたりと。時間をかけずといっても急いてやるのはだめです。動かしている関節が温かくなっていくことや柔軟性を取り戻していくのを感じ取れるように少しずつは時間をかけて行ってください

 

f:id:Tomo-Cruise:20170408072405p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072415p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072420p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072430p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072436p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072442p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072448p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072453p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072459p:plain

 

  関節と結合組織を動かしていくプロセスは局部的でも複合的でもある。特定の関節を意識的に動かすこともあれば、関節や結合組織をともに連動させて統合的な動きを意識することもあるのです(Figs.35.11-25)。

f:id:Tomo-Cruise:20170408072838p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072845p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072851p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072858p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072903p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072911p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072917p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072923p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072930p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072935p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072941p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072947p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408072952p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170408072958p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170408073003p:plain

  いくぶん矛盾に聞こえるかもしれないが、筋肉の能力を適切に発揮させるのは、いかに筋肉を弛緩(リラックス)させることにかかっているといえる。弛緩した筋肉こそがスムースなパフォーマンスを可能にするのです。張った筋肉ではギクシャクした動きを引き起こしパフォーマンスを低下させるだけです。オリンピックや国際大会で活躍するランナーが走っているスロー画像を見たことがあるかと思いますが、彼らはそのスピードを保ちながらも力んでおらず、筋肉は弛緩していること(固まっておらず液体のように揺れている)が映像からも見てとれると思います。
 しかし、ベストの力を発揮しようとしているときに筋肉を弛緩させるとはどういう状態なのであろうか。ところで、筋肉とは伸展と収縮によって機能します。そして筋肉は伸びきっている(伸展)ときに弛緩していないと断裂してしまうこともあるのです。筋肉は弛緩した状態を保つことができる範囲で伸展させるのが効果的といえるのです。柔軟性を強化するトレーニングで重要なのは、ただ単に筋肉を伸ばすことではなく、弛緩した状態を保ったまま伸展する範囲を広げていくことなのです。
 興味深いことに、柔軟性を強化するトレーニングの基本は精神的な面から始まります。心理療法でも広く使われている技術で、それぞれの筋肉や筋肉群に重量・温度そして弛緩の感覚に集中するというものです。1920年代にJ.H.シュルツによって提唱された自律訓練法から発展した心像トレーニングであり筋肉の柔軟性に実際に効果的であることが実証されている。
 肉体的領域においては、特定の筋肉や筋肉群を固定ポジションで十分に伸展させ維持する次の一連のエクササイズを紹介しよう(Figs. 35-26-37)。伸展しきった状態を一定時間保持することが基本となる。これらは漸進的(徐々に進む)エクササイズであり、少しずつ発展していき、やがて十分な柔軟性が手に入ります。

 

f:id:Tomo-Cruise:20170412085123p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170412085137p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170412085150p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170412085158p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170412085210p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170412085220p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170412085230p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170412085239p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170412085248p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170412085256p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170412085307p:plain

  単純な前屈運動(つま先タッチ)を例にとってみよう。普段から習慣的にストレッチしていなければ足首にさえ手が届かないかもしれませんし、さらに足首に届いたとしてもそのポジションを数秒保持することも難しいかもしれません。3,4回以上十分に筋を伸ばせばつま先に手が届き、さらに10秒以上ポジションを保持できるようになるかもしれません。ストレッチを習慣化すれば、数週間後には掌で地面にタッチすることができ、30秒以上もポジションを保持できるくらいに柔軟性が増しているはずです。これは典型的な筋肉伸展であり、筋肉(と結合組織)が十分に伸展することに慣れ、そのことにより完全に弛緩することもできるようになったということです。そして全ての筋肉群において伸展時の弛緩状態を可能にすることはパフォーマンス向上に即座につながるのです。
 一人で行うストレッチが何時でもどこでも行えて便利であり効果的でもあるが、完全伸展を確実にするには他人や何かの支援が必要なこともある。特にパートナーに手伝ってもらうことによって自分で課した限界を超える柔軟性を得ることができる。この場合、バリエーションが2つある。パートナーが既に屈曲している方向にさらに押し込み可動域の幅を増すことが一つ。もう一つは、屈曲状態から元の状態に戻る際にその反対方向に抵抗をかけることです。その効用は能動的に屈曲状態から戻る際に筋肉に弛緩すること(リラックスすること)を教え込むことにあります。この屈曲状態から戻る際の抵抗を与えることを繰り返すことにより、筋肉は作業状態(収縮)から弛緩状態(伸展)へより迅速に移行するようになるのです。
 フリーウェイト(バーベルなど、ここではシャフトのみ)も柔軟性を促進するには効果的で(Figs.35.38-41)、同時に強度調整も行うこともできる。パートナーの支援を得ることと同様にウェイト(シャフト)の影響により自力での伸展より筋肉を伸ばすことが可能だ。またパートナーの反屈曲における抵抗と同様に弛緩状態を教え込むことの助けにもなる。

f:id:Tomo-Cruise:20170413194729p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170413200806p:plain

f:id:Tomo-Cruise:20170413200816p:plainf:id:Tomo-Cruise:20170413200826p:plain

  f:id:Tomo-Cruise:20170414065253j:plainまた振子運動(スウィングエクササイズ)も柔軟性を促進させる別の方法だ。脚を振子のようにスウィングさせ可動域を広げて、通常よりも筋肉を伸展させ柔軟性を促進します。